ヨーロッパと日本の私

ヨーロッパで体験した事、等々

淑ちゃんとジュネーブ

(新しい生活様式)等、3項目を加えて自粛は5月31日迄、延長する事になりました。

連日の散歩が一段と大事な意味を持ち、運動量を減らさないように歩く途中に、今日は

遠い思い出が戻ってきて、ふと、涙がポロポロと出て、懐かしい亡き淑ちゃんを

偲ぶことになりました。 逢いたいねぇ、、淑ちゃんと声にしたりして。

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淑ちゃんとの、ヨーロッパで初めての小旅行、ジュネーブから乗った汽車が長い

シンプロントンネルを抜けると、急に景色が変わりミモザが咲き乱れるイタリアの春の

美しい風景が目に飛び込んで来ました。ほんとうに感激の連続でした。

その夜はコモ湖に宿泊予定、有名なヘミングウエイの<武器よさらば>の舞台になった地を訪れる感動と、周りの美しい景色に打ちのめされ、私達は湖の周りを無言で暗く

なるまで歩きました。コモ湖の深い色はなにいろと表現すればいいのでしょう。

 

淑ちゃんは(雪のベニス)が好きでした。でも春のイタリアを一緒に旅行しようと考え

Duesseldorfの私を誘ってくれたのです。ドイツ中部・南部地方の広大な風景にやっと

慣れそうだった、ドイツ生活の短い私は、国鉄が南下してスイスに入り、さらに、

イタリアに行く可能性をどれほどに感激した事でしょう。ヨーロッパの国々が、

こんなにも近く簡単に行き来できる、でも一つ一つの国の歴史や生活は独自の特色を持っていて、来たいと願ったヨーロッパを知る機会のある事に感動して、淑ちゃんに

深く感謝したのです。その後も私達は度々、旅行や休暇を過ごした、青春時代の大事な親友でした。

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一歩先に行くからねぇ、、と淑ちゃんがフランスに出発したのは1970年、フランス語を2年間勉強して、ジュネーブのUNO・国連事務局・日本政府代表部に勤務しました。

日本から会議に出席する政府関係者の予定作り、食事の用意に、時には国境を越えて

フランスのレストラン、メニー、味見、等、プロ級の仕事を喜んでしていました。

 

彼女は日本で、すでに<草月流・師範>の免許があり、スイスで現地の人々に教え

たいとの強い希望を持っていました。生活を立ち上げるため日中は働き、夜は

(いけばな)を始めたのです。いまだ、I.I.=生花International がアメリカ中心に広がりつつも、ヨーロッパは未開地、興味を持つ人達を募るのに、政府代表部のご婦人達の

協力もあり、数年で立派な組織になります。現在では、スイス各地に支部ができて、

いけばな人口も定着、増加しています。

しかし、その頃(乳癌)を発病します。どんなに苦しかったか、、いかに(いけばな)を続けるか、、闘いの数年でした。

日本の経済成長期時代は、日本から(家元)一行がヨ―ロッパ巡業に来られて、多くの

企画が組まれ、彼女は中心になって行動したのです。ドイツはケルン、フランクフルトにも飛行機や国鉄、自動車で移動を共にしました。現地の人々は<マダム 淑>の名を

唯一の日本人・いけばな家として尊敬しました。その大きな願いは達成しながらも、

平行して(癌)の再発との電話を貰った時は、気を失う程のショックでした。

 

当時の私は主人の看病が、ラパルマで始まり、簡単に外出できない状態でした。

度々の電話がせめてもの励ましの時間、彼女は耐え抜き、大阪の家族が見舞いに来る

ようになりますが、働いているから数日で帰国します。

 

1998年夏、、来てほしい、、とラパルマで電話を受け、言葉を失いました。

しかし、主人は半盲、インシュリンの注射、食事と2匹の犬の事、一歩も外出の

可能性がないのは周知して、日本の家族にその旨電話で説明して、私が行けないから、

直ぐ、誰かが来てあげてほしいと頼んだのです。後日の話では、食欲もなくなり、

ほうれん草のおしたしが食べたいと言い、嬉しく食べたのだそうです。

 

力尽きて、、ほんとうに、力尽きて、1998年9月8日、65才で逝去しました。

草月流本部は、長年の彼女の仕事を労い(功労章)を家族に渡したのです。彼女の願いは

大きな成果をスイスに残しますが、一命をかけた半生だったのです。

 

(ジュネ―ブ)が好き、いつ、どこに行っても、レマン湖の橋を渡る時、帰って

きた、とうれしいの、となんども話していました。 

   

    youtu.be 共有した時間、議論した仲間、優しかった性格のすべては、私の中であまりにも

 大きな位置を示していて、在りし日を思い出すだけでいつも涙が止まりません。

 

  ** 南無阿彌陀仏 南無阿彌陀仏  合掌 合掌 合掌 **

      淑ちゃん、ほんとうにありがとうございました。